★マニアックな旅の空から★
近況報告:2007年9月


9月16日
頼もしき遊覧船・前編 【こちらのアルバムと一緒にご覧下さい】

(山陰海岸地域の切符・宿の情報、過去の旅行記はこちら


 兵庫県香美町、香住。その地名を、どのぐらいの方がご存じだろうか。
「贈答品のカニやイカの箱に書いてあるのを、見たことが…」
 という人が一人いればいい方だと思う。もちろん、ご当地付近は別にして。

 夏の盛りのよく晴れた日、その町域の西にある、海と崖と山に囲まれた集落を訪ねた。良く言えば静かな、悪く言えば寂れた集落そのものも見どころなのだが、山陰本線の無人駅が小高い場所にあり、そこから見下ろす海が素晴らしい。
「…逆に、海からこっちを見たらどんなだろう」
 無理難題に見えて、実はアテがあった。香住の漁港から「三姉妹遊覧船・かすみ丸」なる船が出て、この付近の海岸沿いを周遊している。しかも日中いっぱい、毎時ちょうどに便があるという。

 ただし、五人以上集まっていれば出港、とのこと。

「う〜む………一応そう書いてあるだけなのか、それともめったに集まらないのか……」
 香住の町を思い浮かべると、この判断がなかなか微妙だ。大小の旅館や民宿が何十軒もある観光の町で、しかも平日とはいえ夏休み。だが、京阪神から二百キロ近く離れた町が海水浴と魚だけで大繁盛とは行かぬらしく、前日に町の中心近くの砂浜を散歩した時も、決して大にぎわいではなかった。日に何回も遊覧船を出さしめる需要があるのかないのか、読み切れない。
 …考えているうちに上り列車が来たので、それに一駅乗って町の中心駅・香住で降り、タクシーに乗る。時刻は十二時五〇分、遊覧船乗り場まで七分ほどだ。
「一時の便か、その次の二時が出るなら乗って、でなきゃ帰ろう」
 帰りの列車は、香住を四時半過ぎに出る「はまかぜ」。航海は約一時間だから三時の便を待つことも可能だが、見渡す限り漁港しかないだろう場所で二時間待つ気はなく、それならば一、二本前の列車で城崎温泉まで進み、駅前の外湯で一風呂浴びてから「はまかぜ」に乗りたい………というより、元々はさっきの上り列車で城崎温泉へ行ってしまう予定だった。何度も行った場所だが、あの町並みや外湯は飽きることがない。

 やがて車窓に漁船の並ぶ姿が見え、そのまっただ中にタクシーが止まった。
「じゃ、ゆっくり遊覧してって下さい」
という声に見送られ、そこへ降り立つ。なるほど、海に向かって桟橋が伸び、水上バスの様な平べったい船がもやってある。客室の幅と窓の数からして、四十人は乗れそうだ。
「あら、遊覧船に乗られるの?」
 かたわらの事務所から、目に鮮やかなスカイブルーのスカートと帽子を身につけた女性が出てきた。スリムで、一昔前の女性警察官みたいなユニフォームが妙に決まっているが、雰囲気はあくまでも「近所のおばちゃん」である。「三姉妹遊覧船」の由来たる三姉妹のお一人らしいが、この人が操船するのだろうか。
「あの…一時の船、出ますか」
「あー、人がもう少しいればねぇ…」
 …もう少しどころか、見渡す限り筆者一人しかいない。二時の便についても何とも言えないが、ただ、三時の便には団体の予約が入っていて、それなら確実に出るとのこと……むろん、そこまで待つ気はない。
「じゃあ、二時まで待ってみますわ」
「すみませんねぇ……けど、三時のなら間違いなく出ますからね」
 頭を下げつつ、しかし三時の便について陽気に繰り返すおばちゃんに見送られ、周辺の散歩に出かける。漁港の船溜まりとセリ場らしい上屋、それと保冷倉庫の他に何もなかったけれど、だだっ広いので、写真を撮りつつ歩くと結構時間がつぶれた。おばちゃんが見るべきものとして唯一挙げてくれた「海の文化館」という小さな展示施設を、駆け足で見て回らねばならぬ始末だった。
「二時前か…どうだろうかなあ?」
 少なくともこの付近には、旅行客など他に見当たらない。けれども町全体ではそこそこの人数が滞在しているだろうから、その中の何人かが昼食を済ませて案内を見て「お、遊覧船か」と思う可能性は低くはない………相変わらず五分五分の予想のまま、船乗り場へと急ぐ筆者。果たして二時の船はいかに?

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